ファッションとはなにか?ファッションの歴史を振り返る

ファッションの定義について

一般的な意味

ファッション(ふぁっしょん,英:fashion):一言で表すと「流行」になる。辞書的な意味でいうと「ある一定の時期に、ある価値観に基づく共有の現象が、少数の集団から多数の集団へと移行していく過程の総称(日本大百科全書)」となる。

「流行(りゅうこう)」はその時代の好みに合って一時的に世の中に広く行われるものを意味する。たとえば今年はピンク色が流行っている、学生の間で「どうぶつの森」が流行っているなどという使われ方をする。

語源はラテン語のfactio(ファクティオ)で、意味は「作り、できぐあい」らしい。そこからフランス語のfaçon(ファソン)となり、英語のfashion(ファッション)になったらしい。

ファッションの同義語としてフランス語ではmode(モード)、イタリア語ではmoda(モーダ)、ドイツ語ではMode(モーデ)という。vogue(ボーグ)という言葉は英語でもフランスでも「流行」や「流行りに敏感な」という意味をもつ。ファッショナブルという意味の英語はフランス語でいうと「à la mode(ア・ラ・モード)」になる。日本語で言えばファッショナブルは「おしゃれ」に相当するのだろうか。ファッショナブルやおしゃれは流行りや最先端のものだけではなく、評判の良い様式に沿っているかどうかも含まれるらしい。おおざっぱにいえば「洗練されている」といったところだろうか。流行していなくてもオシャレというのもはありえる気がするので、定義が難しそうだ。

流行りの期間によっても名称が変わることがある。比較的短い場合はfad(ファッド)やboom(ブーム)という言葉で使われ、定着するとcustom(慣習)という言葉が使われるらしい。

流行はどこからくるのか

そうした流行はどこからくるのだろうか

「少数の集団」から「多数の集団」へと移行していくという説明がファッションの説明なら、流行は「少数の集団」からくる。雑誌やテレビ、ファッションサイト、ファッションショーやSNS等々から「流行り」が意図的に作られる場合もあるし、自然に作られる場合もある。ブログやTwitter、ユーチューブ等を利用する人で発信力がある人を「インフルエンサー」という。

影響力のある人が「こいう服がオシャレだと思う」という発言をして、その人に影響を受けた人が同じような服を着始めたとする。そうすると、「少数の集団」で流行することになる。さらに「少数の集団」が他の人に影響を与え、「多数の集団」へと流行が拡大することになる。このような過程をファッションという。しかしあまりにも多数の集団が同じような服を着ていると新鮮さや独自性がなくなり、いずれは廃れていき、流行遅れとなる。

「ファッション界には、テレビ・雑誌・ブログが消費者に何を着るべきかを命令しているのだという誤解があります。しかし、ほとんどのトレンドはターゲット層を調査してからリリースされています。従って、あなたがメディアで目にするものは、人々の間で人気のあるアイデアを調査した結果なのです。本質的に、ファッションというのは人々がアイデアをキャッチボールする営みなのです、他のアート形式もみなそうであるように(ファッション編集者のシャロン・マクレラン)。」

このような考えもあるようです。流行を作るのはメディアだけではなく、消費者も流行を作っている双方向のものだということです。たしかに1か0かで物事を考えると危険かもしれません。

ファッションは服飾関係にのみ関係する用語なのか?

ファッションを広義に考えるなら、「流行やその過程」を意味する。したがって服だけではなく、思想なり食べ物なり言語なり芸術なりゲームなり、さまざまな有形無形のものが含まれる。

しかし実際の言葉の利用の頻度としてファッションは「服飾(ふくしょく)」に使われることが多いらしい。服飾とは衣服とその装飾品を意味する言葉です。具体的にいえば装身具、美容(理容、髪型、化粧)、香水などです。装身具はネックレスやイアリングなどです。

そのような理由から、ファッションは「服飾流行」と訳される場合があるそうです。つまり狭義にはファッション=服飾流行という理解も可能です。

たしかに「ファッション雑誌」と聞いて食べ物やイラストの「流行り」が記載されているイメージはあまりないです。ファッションと聞けば服飾関係だな、と連想する場合がわたしにも多いです。

衣装はもともと人間そのもの、もしくは人間と一体のものであるが、ファッションは個人的意思表示である以前に、フックスE. Fuchsがいうように「主調となる世界の概念の表現」、つまり社会の徴表であり、記号である。この個人と社会の矛盾と対立のなかに、ファッションの本質が潜んでいる。個人は自己を主張し、変化や新しさへの勇気を好む半面、慣習に従い、それを模倣することによって社会から逸脱することを避け、社会に順応しようとする。

出典

この文章はななかな奥が深そうです。「模倣することで社会から逸脱することを避ける」というのは個人の経験からなんとなくわかります。服を買うときに、流行っているシャツや好かれるシャツ、かっこいいシャツ、オシャレなシャツといったようにウェブで検索した方は意外と多いのではないでしょうか。私も検索したことがあります。個性をもとめるというより、無難なものを探そうという意図が強かった気がします。

そういう意味ではアート性の強いファッションよりも、リアルクローズ的なファッションのほうが身近な気がしました。

ファッションと自己表現

「自己表現」とは「自分の内にあるものを別の形にして外部化すること」です。「個人的意思表明」という言葉もあります。服がその人を表す「記号」であるという考えもあるようです。「どのような服か」によって「どのような人か」をも表すといったところでしょうか。たとえば地味な灰色のシャツばかりを着ている人は内面も地味で、目立ちたくないのかもしれません。

ファッション性を追求する人が世の中にはいて、ファッション雑誌やパリコレ等、最先端のものをチェックしています。そういう人たちが求めているものは何でしょうか。一方では「人との違い」であり、一方では「人と同じこと」だといいます。

ジンメルという社会学者は対立する二つの欲求を「同調化と孤立化」、心理学者のラングは「同一化と差別化」と表現したそうです。孤立化とは新しさであり、人との違いであり、独創性でもあります。そうした新しさが人に共感され、人に模倣されていくようになると「小さな集団」で流行し、そこからさらに「大きな集団」で流行するようになります。このような模倣の連鎖は「同調化」という側面があるようです。人との違いを求めて新しいものを取り入れていくと、それをまた模倣する人が出てきて、流行になり、新しさがなくなり、また廃れていき、新しいものをまた取り入れるというサイクルです。

ファッションの歴史

ファッションは頻繁に変化するものが一般的らしい。ファッションの周期は「発生→伝播(でんぱ)・拡大→頂点→衰退→消滅」というプロセスを通る。このプロセスが比較的早いというのもポイントなのかもしれない。ファッションのサイクルの時間の長さをファッション・ライフ(fashion life)という。このファッション・ライフは年々短くなる傾向があるそうだ。そうした傾向は経済にも関連があるのかも知れない。たとえば企業が利益を増大させようとすれば、同じ服をずっと着させることはよくないことになる。頻繁に服を買わせるためには、頻繁にファッションというものを変える必要がる。「まだその服を着ているのか、ださい」と思わせる必要がある。

古代のファッション

古代にはあまり見られなかったという。たとえば日本の衣服は1000年以上もの間変化していなかったという説もあるほどです。ファッションというある種の社会現象は西洋からはじまったといわれていますが、古代においては西洋もファッションというものがあまりなかったようですね。

中世のファッション

ファッション(服飾流行)が始まったのはヨーロッパで、時期は14世紀中期頃らしいです。ヨーロッパはかなり広義な言葉で、現代の定義では「欧州評議会」の参加メンバーとみなしたほうがわかりやすいかもしれません。

wikiより

イギリス、フランス、イタリア、オランダ、ドイツ、スイス…と47カ国にわたります。地理的にいえば「ユーラシア大陸の北西に位置する半島」ですかね。

ジェームズ・レーヴァーやフェルナン・ブローデルといった歴史家いわく、この時期(14世紀中期)が西洋の服飾ファッションのはじまりらしいです。西洋以外の地域では殆どの文明で頻繁に変化するファッションは見られなかったそうです。日本では1927年9月21日にはじめてファッションショーが日本国内で開かれたらしいです。着物のファッションショーだったらしいです。

15世紀になるとファッションの変化するペース速くなっていったそうです。

まずは具体例を見ていきましょう。服飾関連の用語に疎い私にとって、このようなことを学ぶのは勉強になります。

出典 チェニックの例

南フランスが発祥だという「短いチェニック」がまずは流行したらしいです。チェニック(tunic)とは「丈が長め(腰から膝ぐらいまで)の上着」のことです。

出典 ブリオーの例

コットの例

次にブリオーという「袖が長いチェニック」が流行したらしいです。東方から持ち込まれたそうです。ブリオーの次も長いチェニックで、体にぴったりと合う「コット」という服が流行したそうです。

こうした「袖が長いチェニック」から、「袖が短い服」に14世紀中期頃変わっていき、流行になったそうです。

「男性服は長く裾引く衣装から、突然短く活動的な衣装へ移行する。コタルディという尻丈の短い前開きで、二の腕までのぴったりとした袖に大きく刳った襟ぐり(デコルテ)の衣装が流行した。この軽快な衣装はイタリアの若者の衣服から輸入され、後にプールポワン、ダブレットまたはジャケットと呼ばれる。」とWIKIにはありました。コタルディは体のラインにぴったりと合い、いままでの緩やかな服とは違ったようです。

マインツの年代記によれば「当時、人間の愚かさも極まり、若者は恥部も尻も隠れない短い上着を着た。お辞儀をすると尻が見えるのだ、何たる信じ難き恥ずかしさよ!(1367年)」とまで書かれていたらしいので、衝撃的だったんですね。女性のコタルディも腰のラインを見せびらかすような形式になり、一部で批判があったらしいです。

コタルディ(cotardie)もチェニックの変種だそうです。13世紀にイタリアで考案され、14世紀半ばごろ西洋社会に広まり、コットとも呼ばれたそうです。意味は「大胆なコット」です。中世の服は軍事的な影響があったそうで、チェーンメイル、ブレードアーマーと呼ばれる鉄板を加工したものがあります。そうした鎧の変化に合わせて、服も変わっていったようです。チェーンメイルは重量の攻撃に弱く、鉄板で作られたブレードアーマーが重視されていったようです。ブレードアーマーは体にフィットしていないと動きにくいため、実用上の問題で体にフィットした服が作られるようになります。これがギャンベゾンで、のちのコタルディです。

男性のファッションは軍装から派生することがおおかったそうです。たとえばクラバット(ネクタイの原型)が17世紀頃にフランスで流行したのは、ルイ14世に雇われたクロアチアの兵士のスカーフが発端だそうです。スカーフは恋人や妻から帰還の無事を願って送られたものだそうです。16世紀頃までは首周りを見せることが主流でしたが、この時期から布で覆うことが流行ったそうです。

チェーンメイルなどの格好の上に着用する陣羽織をチェニックやサーコートというらしいです。首から膝下くらいまでの長さがあるそうです。

ギャンベゾンの例 出典

ブレードアーマーや鎧と共に着て擦れや衝撃を吸収するものがギャンベゾンです。特に15-16世紀のヨーロッパで、ブレードアーマーの鎧の下に着用されたそうです。

男性用のコタルディは尻を覆うほどの丈があり、女性用のコタルディは床に袖を引くほど長かったそうです。WIKIによれば「ふくらはぎまであったものが辛うじて尻を覆うだけのものとなり」とあるので、これも大きな変化なのだと思います。こうしたものが14世紀半ばに起こった流行(頻繁に変化していく流行)のはじまりだったそうです。

コラム:アンシャンレジーム

「アンシャンレジーム」という言葉を聞いたことはあるのですが、よく意味を知りませんでした。フランス語でAncien régimeといい、意味は古い体制らしいです。フランス革命以前の16-18世紀頃の時期を指すようです。その時期、フランスでは絶対王政が政治の形態だったそうです。君主(王さま)が絶対的な権力を行使する体制ということです。今の日本では形としては民主主義であり、国民が選んだ代表が政治を動かしています。昔のフランスはそうした選挙を経ずに、世襲制等の王様が政治を動かしていたということです。フランス革命(1789-1795年)によって身分制や領主制がなくなり、現代の民主主義に近いものへと進んでいったらしいです。

出典

第一身分は聖職者、第二身分は帰属、第三身分は市民や農民だったそうです。第一身分と第二身分は特権をもっており、免税などがされたそうです。また第三身分は国政にほとんど関わることはできなかったそうです。絶対王政の前は?と疑問になうるかもしれません。絶対王政が「中央集権制」なので、おそらく分権制的な体制だと思います。日本でいうと封建制ですね。しかし絶対王政の中にも封建的な要素が多いので話はすこし複雑かもしれません。

ファッションの変化はまずヨーロッパの上流階級全体が非常に似通った衣服のスタイルをしていたのを細分化させ、各国は独自のスタイルを発展させるようになり、17-18世紀にはそれに逆行して再び類似したスタイルを強いる動きが現れ、最終的にはフランスのアンシャンレジームのファッションが支配的となった。通常は富裕層がファッションを先導したが、近世ヨーロッパの富の増大によりブルジョワジーや農民までさえも流行を追うようになり、時としてはエリート階級が不快に感じる水準にまで至った――ブローデルはこれがファッションを変化させる主要な動機の1つと考えていた。

出典

「アンシャンレジーム」という言葉が出たのはこの項目です。ナポレオンが登場したのはフランス革命後ですが、この時期のフランスは強かったんでしょうね。

感覚的な話になってしまいますが、ファッション=フランスというぼやっとした認識が私にもすこしあります。フランスはなんとなくオシャレだというイメージを持っている人は多いのではないでしょうか。パリコレもフランスのパリで行われるファッションブランドの新作発表会です。「フランス人は全体的に「自分を着飾る」という精神や行為そのものを大事にしていて、おしゃれを心から楽しんでいるように見える。(・・・)日本人のおしゃれで重視されるのって「センス」とか「洗練」とか「抜け感」だとか、いかに他人からの印象を良くするかをメインに考えませんか?(出典)」というあるサイトの言葉はなるほどなと思いました。

近代以降のファッション

版画出版

1780年代にフランスで、パリのスタイルを伝える「版画出版」が増加し、ファッションの変化が加速したそうです。

ジャン=ジャック・ボワサール『諸国民の服装』1851年

ジュール・ダヴィット『モニトゥール・デ・ダーム・エ・デ・ドゥモワゼル』1885年頃

シャルル・マルタン《雪》『モード・エ・マニエル・ドージュルデュイ』1913年 神戸ファッション美術館蔵

出典

これは「19世紀フランス 銅版画」とありました(ヤフオクの画像から引用しています)。

版画(はんが,英:print,物:estampe)とは一般に「印刷という間接的方法で表現する絵画の形式」らしいです。といってもイメージできませんよね。

たとえば銅版画では銅でできた板に凹みをつくり、そこにインクをつめます。その上から紙をのせて絵にするというものです。逆に凸部に色をつけ、凹みは色がつかないという方法は一般に凸版といわれます。西洋美術では凹版画(おうはんが)がもっとも広く用いられたそうです。現代では銅より安価な素材であるポリ塩化ビニル板などが用いられることもあるそうです。

Katsushika Hokusai The Underwave off Kanagawa, 1829/1833, color woodcut, Rijksmuseum Collection

出典

Hiroshige, Morning Mist

Jost Amman – Originally from Jost Amann: Eygentliche Beschreibung aller Stände auff Erden hoher und nidriger, geistlicher und weltlicher, aller Künsten, Handwerken und Händeln …, 1568

出典

木版画は凸版画(とっぱんが)です。葛飾北斎や歌川広重も木版画で絵を描いていたそうです。これが木を彫ってつくられているというのだから、すごい世界ですね。小学生の頃に木版画を彫刻刀を使って製作した方は多いのではないでしょうか。私も作った記憶があります。一度作れば何回でも複製できる、つまり何枚でも画(え)を刷(す)ることができるわけです。左右反転しているから作りにくかった記憶があります。

素晴らしい版画の絵ですこし話がそれてしまいました。このようなな版画が出版されることにより、より多くの人が流行りのファッションというものを眼にする機会が増えたということです。ただし17世紀には見本として着飾った人形からフランスから流通し、さらに1620年代以降にはアブラハム・ボスというひとがファッション版画をすでに製作していたらしいです。

版画印刷によってファッションが変化しやすくなるというのはなんとなくわかります。現代もファッション雑誌によってファッションが形成されている面があるので、それの原型かもしれません。

1858年にはイギリス出身のシャルル・フレデリック・ウォルトが最初のオートクチュール店をパイで開きます。ウォルトはデザイナーによる季節ごとの新デザインの提案やファッションモデルの起用、ファッションショーの開催などを行ったそうです。この時期が「ファッションデザイン」のはじまりであり、これによってデザイナーの地位が高まったらしいです。

1960年代には大量生産品であるプレタポルテ(高級既製服)が登場し、オートクチュールに代わりファッションの中核となったそうです。また、ジーンズやミニスカートのようなストリートファッションが登場したそうです。

ファッションの中心地は18世紀以降フランスのパリにありましたが、1970年代以降はオートクチュールが衰退していくとともに、ミラノやニューヨークもファッションの中心地となっていったそうです。

2014年のニューヨーク・コレクション(ファッション・ウィーク) 出典

ファッションの都といわれる世界4都市がファッションの中心地なのではないでしょうか。イタリアのミラノ、フランスのパリ、アメリカのニューヨーク、イギリスのロンドンです。これらのファッションウィークは「世界四大コレクション」ともいわれるらしいです。

コラム:オートクチュールとはなにか?プレタポルテとの違い

無教養な私は知らない単語ばかり出てきて困ります。フランス語の「haute couture」からきているらしいです。フランス語でhauteは高い、coutureは縫製(ほうせい,仕立て)を意味するらしいです。

パリ・クチュール組合(通称サンディカ)加盟店で注文により縫製されるオーダーメイド一点物の高級服やその店のことらしいです。1868年にフランス・クチュール組合が創設され、20世紀初頭までにはパリに多くの店が乱立してたらしいです。加盟店はメゾン(maison)と呼ばれ、さまざまな規定があったそうです。たとえば1年に2度のコレクションの開催やアトリエの常住スタッフの数などです。

スーツ一着300万円するらしいです。なるほどたしかにオート(高い)クチュール(仕立て)です。あの有名なシャネルも加盟店の一つだそうです。オートクチューの業界は顧客が減っていて、ほとんどのアトリエをシャネルが買い取り、傘下においたそうです。

シャンブル・サンディカルの設立により、それまで顧客の一方的な注文や、ある程度の規格の中から顧客が好みのデザインを指定して作ったり、デザイナーが客の希望を聞きながらデザインする服作りが、デザイナーがデザインしたものを顧客の体に合わせて仕立てて売るという「デザイナー主導」になり、顧客にとって「デザインを買う」=「芸術作品を買う」ということになった。単なるオーダーとのこのような違いから、デザイナーの社会的地位も大いに高まった。

出典

オーダーメイドと聞くと客の要望を店が聞いて作るようなイメージがあります。しかしオートクチュール(サンディカルの設立以降)の場合は「デザイナーがデザインしたもののを顧客の体に合わせて仕立てて売るというデザイナー主導」になったそうです。色はピンクで、袖はこのくらいの長さで、といったように顧客が注文するのではないのですね。「デザインを買う」=「芸術作品を買う」というのもファッションとアート(芸術)の関連においては重要になってきそうです。

何百万円もする一点物のオーダーメイドのオートクチュールを現代でどれくらいの人が買っているのでしょうか。WIKIでは実際にオートクチュールを購入する人は世界で年間500人にもいないとあります。王侯貴族や有名女優たちが顧客だそうです。現代ではオートクチュールだけで仕事になっている店はほとんどなく、後述のプレタポルテ(既製品)を兼ねている店がほとんどのようです。

私もスーツをオーダーメイドで作ったことがありますが、一点物のデザインではありませんでした。オーダーメイドは「採寸・型取り・縫製された注文服」です。デザインはすでにきまっており、体に合わせるだけです。他に同じようなスーツを着ている人は何万といるでしょう。

「プレタポルテ(prêt-à-porter)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。私はありません。日本語では「既製服」を意味するそうです。ファッション用語では「高級な既製服」を意味することもあるそうです。大量生産された粗悪な安物という意味で既製品が使われる場合は、「コンフェクション」や「レディ・メイド」ともいうらしいです。

「衣料事業者が商品化し大量生産した衣料品のこと、あらかじめ特定のサイズの服を用意しておく既製品の服」のことを一般的に「既製服(きせいふく)」といいます。

オートクチュールが一点物だったのに対し、プレタポルテは大量生産されているというのがポイントです。一般的な人々が服を購入する場合はほとんどプレタポルテなのではないでしょうか。たとえばユニクロにいけばハンガーにつるされた大量の服が並んでいます。Sサイズ、Mサイズ、Lサイズといったようにサイズごとに大量に生産され、どのような体型の人でも基本的に合わせられるような仕組みになっています。基本的にオーダーメイドではないのです。

パリ・コレクション、通称パリコレというファッション・ショーがありますが、これは世界最大の高級既製服展示会(プレタポルテ・コレクション)だそうです。1950年代までパリコレはオートクチュール・コレクションだったそうですが、1960年代以降はプレタポルテ・コレクションも兼ねるようになったそうです。いずれにせよ一点物ではなく、大量生産という意味では同じですね。

現代のファッション

20世紀後半に入り、ファッションは上流階級が独占する小さな市場から大衆の参加する巨大市場へ移行したそうです。オートクチュールのようにごくわずかなお金持ちが一点物の高価な服を購入するようなものが「小さな市場」ですね。大きな市場は大量生産品(既製品)が大衆によって消費されるものです。高級な既製服であり、安価な既製服であれ、どちらにせよファッション性というものが大事になってきます。あの安くて高品質で有名なユニクロもアパレル産業のひとつであり、ファッション性を求めています。

キーワードは「アパレル産業(apparel industry)」ですね。アパレルという言葉は何度も聞いたことあるのですが、意味を詳しくしりませんでした。なんとなく服に関係した産業というイメージでした。apparelとは英語で衣服、服装という意味らしいです。

新しい産業分類の一つ。アバレルとは衣料一般のことであり、アバレル産業は、衣料製造業の総称。とくにアメリカ流の呼称に変えた背景には、商品企画力を強め、ファッション性の高い衣料を開発することにより、市場を高級化し、欧米などの高級衣料に対抗しようとする意図がある。

・・・

発展途上国の繊維産業が急速に力をつけ,日本の競争相手となってきた状況のなかで,このころから高付加価値化の必要性が叫ばれるようになり,色,柄,デザインに優れ,流行にマッチした,さらには先取りする商品を企画・製造するファッション産業への転進をめざす衣料品メーカーもふえてきた。

出典

ファッション性の高い衣服というところにポイントがありそうです。アパレル産業という言葉が日本で使われ始めたのは1970年代ごろだそうです。発展途上国の繊維産業が力をつけはじめ、日本の競争相手となってきたときに「ファッション性の高いもの」が要求されるようになってきたということですね。

「着ることができればどんな服でも良い」という消費者が仮に多かった場合、安い海外製の服を買ったほうがいいということになります。そうすると日本で生産される服が消費されずに、衰退してしまいます。そうした背景で「アパレル産業」という言葉が用いられ、「ファッション性」を重視するようになったということですね。

「ファッション性」とはなんだ?とまた戻ってしまいそうになります。「流行り」だとか「オシャレ」だとかそういう曖昧な感じですね。「色,柄,デザインに優れ,流行にマッチした,さらには先取りする商品」というのは単なるファッション(流行服飾)を超えた、オシャレや洗練されたというニュアンスも入ってそうです。(例えばです)中国製の安い服はオシャレじゃない、日本製の高い服、ハイブランドの服はオシャレといったように分けたいのかもしれません。フランスの服は何万円もするイメージがあります。素材は安物と同じでも、ブランドの力で付加価値をつけています。こうした付加価値をいかにつけられるか?というのがアパレル産業のポイントですね。

現代のファッションの特徴は映画、テレビ、雑誌、SNSといったメディアが流行を形作っているということではないでしょうか。ファッション・ウィーク(ファッション・ショー)も現代のファッションの形成に強い影響を与えています。

コラム:アートとリアルクローズ 庶民には買えない服とは

リアルクローズ(real ckothes)とは日本語で「現実性のある服」を意味するそうです。

1960年代にパリの服飾ブランドが人気だったそうですが、1970年代半ばにはニューヨークの服飾ブランへと人気が変わっていったようです。どちらも高級既製服ですが、ニューヨークの服のほうが「着回し」ができるようなベーシックなものだったそうです。「着回し」とは「一着の服を、他の服との組み合わせを変えたり、装身具を組み合わせたりして異なる感じを出し、さまざまに装うこと(小学館)」です。

たしかに奇抜でアート性が高い服は他の服と合わせにくく、それ自体で完結してそうです。

出典

たとえばこれはアート性が高そうな服です。「装苑賞」は、1936年に誕生したファッション誌『装苑』の創刊20周年を記念して、1956年に創設された日本を代表するファッションコンテストらしいです。

この歴代受賞作品を見て思うことは、アート(芸術)に近いなという感じです。とても普段着として着る人はいないだろうなという感じです。また、「着回し」もできそうにないので、リアルクローズではなさそうです。

出典

出典元サイトにはパリコレの6つのトレンドが挙げれています。グリーン、トランスペアレント&レース、カットアウト&ネット、デニム、バミューダパンツ、クラシック・時代性の6つだそうです。

昔からパリコレで着ているような服を一般人が買うわけがない、そんな人見たことがない!と思っていました。そうではないんですね。あくまでも抽象的な概念なんですね。たとえばパリコレで緑色の服が出たら、今年の流行り(ファッション)は緑色だ!というように決まり、緑色の服がアパレル業界でデザインされ、生産され、店に出回るということなんですね。また、できるだけ緑色の服を着ていたほうがオシャレだ、流行に乗っているということになるということですね。

なんだかファッションについて理解がほんのすこしだけできた気がします。

1990年代半ばになると、ファッションショーやコレクションで見られるような奇抜なデザインではなく、一般庶民でも金銭的に購買可能な価格帯にあるファッション性の高い既製服を「リアル・クローズ」と言うようになった。すなわち、一般庶民にとって現実には金銭的に買えないが、流行には影響するオートクチュールおよびプレタポルテに対する概念へと変化した。

2002年(平成14年)に始まった神戸コレクション(神コレ)が始まりで、小売に直結するリアル・クローズを対象とするファッションショーが日本で多くの観衆を集める興行として成立するようになった。特に2005年(平成17年)に始まった東京ガールズコレクション(TGC)は、「日本のリアルクローズを世界へ」とのスローガンで開催され、輸出可能なかわいい文化の1つとして外務省が後押ししている。実際に、神コレやTGCが中国での興行を行っており、その他にも日本のリアル・クローズのブランドが日本文化紹介イベント(ジャパン・エキスポなど)に参加している。

出典

奇抜なデザインで高価な服ではなく、より安くファッション性の高い服を「リアルクローズ」というそうです。このファッション性というものはパリコレから生まれるものもあれば、メディアなどから生まれるものもあるということですね。

出典   東京ガールズコレクション

たしかにリアルクローズをスローガンとするだけであって、街で着ている人がいるようなイメージがあります。

感想になった元スレ

ファッションはアートなのか

参考文献

ファッション(コトバンク)

ファッション(wiki)

洋服の歴史(WIKI)

アンシャンレジーム(wiki)

オートクチュール(wiki)

リアルクローズ(wiki)

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