ワンドロとはなにか?その意味とやり方について

ワンドロとはなにか

意味

ワンドロ(わんどろ,one draw):1 hour drawingの略。1時間(1時間以内)で描くという意味。ドローイングは線画という意味ではなく、単なる「お絵かき」という意味で使われている。 TwitterなどのSNSなどで「お題」が出され、企画として複数の人数でやることもある。一人で練習としてやる場合もある。

やり方

やり方に決まったものはない。出されたお題に絵を描くだけだ。どのようなツールを使うか、どこまで描くかといったものは企画のルールによって異なるので一概には言えない。練習としてやる場合には自分で好きに決めていい。基本的には線画で終わらせるのではなく、色までつけて「一枚絵」として仕上げる場合が多いようだ。

ワンドロの意義

絵の練習としてやる場合と、腕試しとしてやる場合の2ケースがある。絵の練習としてやる場合は自分のスキルを増やすことが主たる目的であり、腕試しとしてやる場合は自分のスキルの確認や他者への提示(他者へ自分を認知してもらうきっかけ、人とのつながり、面白さ等)としてすることが主たる目的であると思う。

練習としてのワンドロで意識するべきこと

(1)限られた時間で絵として成立するものを描く

プロ同士の会話では「時間をたくさん使えば上手い絵は誰でも描ける」といったものがあるそうだ。この線は綺麗じゃない、といって描き直す。この色じゃなくて別の色にしようといって塗り直す。やっぱり違う構図にしようといってすべてやり直す。あるいは大量に描きこむ。あるいは大量に削る。人生において絵の上達というのがこの作業の連続のようなものだが、一枚絵を仕上げるのにこうした作業を繰り返せば確かにうまい絵はいつか完成する。

しかし1枚描くのに何年もかかっていては「仕事」としてはあまり効率がよくないようだ。絵を生業にする場合には絵のスピードも重要になる。イラストレーターには納期があり、漫画家には締め切りがある。どちらも時間を守らなければ次の仕事はこない(ただし富樫先生を除く)。

「限られた時間で絵を完成させるスキル」を磨くためには、実際に時間を制約して絵を完成させる練習が有効なのはもっともだと考える。ただし「1時間でないとだめ」というわけではない。30分でも、2時間でも、3時間でも、10時間でもいいと思う。漫画を1時間で完成させるというのはなかなか難しい。それぞれの分野によって練習方法を変える必要がある。

ただし「1時間で一枚絵を完成させるスキル」というのはわかりやすく、また企画として参加しやすく、応用がききやすいので便利だ。人間の集中力は大学の講義の時間が90分区切りなように、あまり長く続かない。60分というのはそういう意味で1枚絵をギリギリ完成させられるちょうどいい塩梅の長さだということだ。

(2)インプットとアウトプットの違いを意識すること

注意しておきたいのは、自分の目的が「速く絵を描くこと」ではなく、「良い絵を描くこと」の場合はワンドロというのはあまり役立たない可能性がある。いい絵はじっくり考えてこそ完成させられる場合があるからだ。あくまでも絵の効率性を上げるというある種の産業的な理由が大きい。あるいは他の人と交流を楽しむことが目的な場合が多い。

そもそもワンドロはデッサン等の知識を実践する場であり、知識がないとそもそも実践できないので実践だけしても練習としては意味がないことがある。基本的にワンドロは「アウトプット(出力)」の場であり、「インプット(入力)」の場ではない。たとえるなら入試問題のようなものだ。時間内に速く問題を解き終わる事が重要だが、試験そのものは参考書を読むときとはちがい、ひたすら覚えたことを思い出して問題を解く場である。

デッサン等をじっくり、長い時間をかけて物の構造や陰影を理解してみる。あるいは色についてじっくり考えて、いい組み合わせとはなにか?と考えてみる。資料についても長い時間をかけてストックしてみる。こういう長い時間をかけて貯めてきたものを短い時間でどれだけ引き出せるのか?という作業がワンドロの位置づけだと考えられる。

(2)アイデアや資料を速く引き出す練習

こちらも「仕事として」やる場合に特に重要になる。「見栄えの良い構図やテーマの面白い解釈やアイデアを速く引き出す訓練」としてのワンドロの活用方法である。しかし基本的には今まで覚えてきた構図を使うか、その組み合わせ、あるいは応用としてのアウトプットになる。アイデアや解釈も同じようなものになる。

ただし、ワンドロには「お題」が出る。たとえば自分が今まで描こうともしなかったような「お題」だった場合はインプットの場としてもワンドロは役立つ。いわばワンドロは「きっかけ」として役立つ。たとえば「ロシア人の女性」というお題が出た場合、ロシアについて調べるきっかけになる。お題の出し方が上手い人を探してみたらいいかもしれない。

「資料」を速く引き出すためには、どういうところに資料があるかも把握しておく必要がある。たいていの場合は特定のワードで画像検索をすることになるが、その検索方法(ワードのチョイス)もコツが必要になってくる。できるだけ具体的に検索できるように、トライアンドエラーしてみる必要がある。あるいは資料が豊富なサイトをブックマークしたり、個人的にいいと思った資料はいつでもアクセスできるようにダウンロードなりブックマークなりしておこう。

「アイデア」を速く引き出すためには、つねにアイデアをメモしておこう。人間はアイデアを長時間記憶しておくことが脳の構造的に難しい。すぐ忘れてしまう。いままでのアイデアの重要なパターンを応用すれば解決できる事が多い。

(3)全体視の感覚を身につける

「全体をざっくりと描くことで、全体視の感覚を身につけることができる」ことができる。たしかに時間を制限することで特定の部分のみを集中して描く時間は短くなり、常に全体に気を配る必要がでてくる。その結果として「全体視」の感覚が身につきやすいのかもしれない。

(4)自分が一番重要だと思う箇所を見つける

「時間を制限することで、絵の中で何が一番重要で、どの部分に時間を割くべきかを身につけることができる」というのもポイントだ。絵で重要な要素は人それぞれなので、正解はない。顔が重要だったり、構図が重要だったり、あるいは髪や唇といった細部が重要だったりする。あるいは具体的ななにかではない、抽象的なある種の「ニュアンス」が重要だったりすることもある。「かっこよさ」、「怖さ」、「可愛さ」等が抽象的な要素の例である。

(5)絵の内容そのものより公開することが大事

この項目は「機会の創出」という点で意味がある。絵を描こう!というきっかけとしてワンドロには意味があり、人に見られるということを前提とする場合の集中にも多くのメリットがある。なによりも「公開すること」が重要になる。

一枚絵を公開することは一定の「怖さが」がある。しかし1時間という制限を加えることで、1時間で描いたものだからすべてを出し切ったわけではないという「言い訳」ができる。言い訳はマイナスに捉えられがちだが、公開することがモチベにつながるのなら、こうした言い訳は武器にもなる。なにも公開しないでただ練習をするよりも、こうした言い訳を武器にしてどんどん公開して成長していったほうがいい場合がある。他の人の絵を見て、この人よりもっと上手くなろう、という刺激の場としても有効になる。

その他ワンドロのコツ、tips

ワンドロのコツが紹介されていた(URL)。これによれば、ワンドロで速く描くコツは「構図を練って資料を準備すること」、「資料を捉えてメリハリをつけること」とある。

・構図を練るためには、まずは構図とはなにか?どんなパターンがあるのかを知る必要がある。

・資料は常にストックしておく。自分の描いた絵も資料になる。自分でポーズを撮って見るのもいい。外にでかけたらカメラなどで撮っておき、オリジナルの資料をストックしておくといろいろと役立つ(特に商業分野では著作権でうるさいので)。

・描きこむ場所を決めておく。はっきり描く場所(描きこむ場所)とざっくり描く場所(描き込まない場所)をわけて考えると時間短縮につながる。自分の魅せたい要素、大事な要素を描き込み、そこを目立たせるような仕組みを作る。

・ショートカットキーを設定したり、記憶する。あるいはマクロを設定する

・ワンドロに適した塗り方というものがある

こちらもワンドロのコツが紹介されている(URL)。

これによれば、1枚のイラストを仕上げるためには6つの工程があるという。

  1. 構図を考える
  2. ラフを描く
  3. 下描きをする
  4. ペン入れをする
  5. 色を塗る
  6. 仕上げをする

・時間配分を意識することが重要。30分で「構図・下描き・ペン入れ」を終わらせ、20分で「色塗り」、10分で「仕上げ」をするといった配分例が挙げられていた。人によって適切な時間は異なるかもしれませんが、一度計ってみると見えてくるのもがあるかもしれません。

・構図をあえて捨ててみる。顔のアップ等で短縮するというような緊急回避的な方法もあるようです。

・レイヤーを分けずぎない。デジタルイラストでじっくり描く場合はレイヤーを何個に分けますが、ワンドロではレイヤーを分けずぎないほうが時間短縮に繋がる場合があるそうです。

ワンドロが開催されている場所の例

有名なワンドロのSNSにおける企画ではTwitterの「深夜の真剣お絵かき60分一本勝負」というものがあるらしい。他にもジャンルによって多種多様なワンドロ企画がある。定期的に開催されるものもあれば、突発的に期間限定で行われるものもある。

ところで、ルナサ、ミケ、たかねと意味がよくわからないワードが続いているが、どういう意味なのだろうか。調べてみるとどうやら、東方Projectというゲームのキャラクターに関するものらしい。たとえばミケとは一面中のボスである豪徳寺ミケというキャラクターを意味しているようだ(おそらくだが)。

このような特定のジャンルのワンドロというのは、そうしたジャンルに詳しくないものにとって敷居がすこし高い。できるだけ自分の詳しいジャンルにまずは参加してみるのもいいかもしれない。あるいはジャンルに拘らない、一般的なお題が出ているようなワンドロを探してみよう。♯ワンドロとTwitterで検索すればいろいろ出てくるかもしれない。

たとえばこれはワンドロとは少し違うが、お題を毎日出してくれる。タグを検索すればワンドロとして使っている人も多いようだ。

ワンクリックでお題を出すようなツールを使う

サービス1:ワンドロフロント

概要 : https://ondrowfront.com/lp
できること: https://ondrowfront.com/ruleandmanner

ワンドロフロントという、ワンドロの支援ツールもあるようだ

サービス2:診断でワンドロ60分一本勝負

 

 

https://shindanmaker.com/545136

クリックするだけでお題が出るので便利である。一人で練習するときに役立ちそうだ。いままで描こうとしなかったものにも挑戦することも大事かもしれない。

今回おすすめする書籍

A. ルーミス「やさしい人物画」(人物デッサン系)

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